法律はなんとなく知っているけど、詳しくは知らないという人は多いと思います。
これからリフォーム・リノベーションを考えている場合、建築基準法といった法律をまったく知らないというわけにはいきません。
専門家レベルで理解することは難しいですが、基本的なことは知っておきましょう。

建築確認について

新築された建物は建築基準法や都市計画法などの法律が遵守されているか、事前審査をパスしなければなりません。これを建築確認といいます。
新築物件の場合、必ず建築確認が必要になりますが、リフォームやリノベーションでは必要なのでしょうか。

建築確認申請をする意味

建てる前に法律に違反していないかチェックすることで、違法建物を排除し、修正を求めることで結果的に施主を守ることになります。
ただし、建築確認申請は建物が合法であるかチェックするものであり、建築を許可するものではないので注意してください。
建築確認は1ヶ月ほどかかるため、ゆとりをもってスケジュールを立てなければなりません。もしも、さらに検査が必要な場合、適合検査でプラス1ヶ月かかってしまいます。
リフォーム・リノベーションの場合はどうなるのでしょうか。

建築確認申請が必要なケース

建築確認が必要な工事は以下の通りです。

  • 建物を新築する場合
  • 木造3階建ておよび鉄骨2階建ての住宅で大規模なリフォームを行う場合
  • 準防火・防火地域内では面積にかかわらず増築工事を行う場合
  • 準防火・防火地域外では10平方メートルを超える増改築を行う場合
  • 鉄骨2階建てや木造3階建ての建物の屋根の葺き替えを行う場合
  • 鉄骨2階建てや木造3階建ての建物の外壁の半分以上を補修する場合
  • 鉄骨2階建てや木造3階建ての建物のスケルトンリフォーム

一覧を見てみると一般的な木造2階建ての物件をリフォーム・リノベーションする場合、増改築をしない限り建築確認は必要ありません。
ただし、現在の建築基準法に適合しない古い木造2階建ての場合、現在の建築基準法に適合した強度がない場合が多く、この場合、既存不適格建築物となります。
そのため大規模リフォームする場合、補強が必要です。このような場合、木造平屋や木造2階建てでも建築確認を行わなければなりません。

建築確認が不要となるケース

スケルトンリフォームの場合

スケルトンリフォームやリノベーションは大規模修繕・大規模模様替と定義され、主要構築物(壁、床、梁、屋根、階段)に手を入れる場合、建築確認が必要になります。
ところが木造平屋、木造2階建て、鉄筋平屋でかつ500平方メートル以下の建物は建築確認が不要です。

トイレやキッチンなど水回りの改修・修繕工事

トイレやキッチンなどの水回りのリフォームは壁や床、梁、屋根、階段とは関係ないため、建築確認申請は不要です。
ただし、キッチンの位置を変えるために壁を取り払ったり、壁の位置を変えたりする場合、トイレの配置換えにより階段の形状を変える場合など、その部分が過半を超えると建築確認申請が必要になります。

マンションリフォームの場合

分譲マンションの住居部分をリフォームする場合、主要構築物に手を入れることはまずなく、リフォームできる部分は限られています。
そのため、住居内のリフォームは建築確認が不要です。ただし事前に管理組合にリフォーム内容を相談し、許可を受けておく必要があります。

NGとなるリフォーム・リノベーション

リフォーム・リノベーションに当たり、「ココを直したい!」と思っても法律的に手を加えられない部分があります。

窓をなくす・小さくする・移動する

例えば、洋室をキッチンにリノベーションしたいとします。洋室には大きな窓があるのですが、キッチンを設置するには窓が大きいいので、窓を小さくするか位置をずらすプランを考えていました。
しかし、ここで問題になってくるのが、建築基準法における採光基準です。
窓から取り入れる光の量と窓の大きさには最低限これくらい必要という基準があります。
面積だけではなく、窓の取り付け高、庇や屋根、窓から隣の家との距離など様々な要因を元に計算する採光計算によって基準が定められているのです。
採光数値が高い窓の場合、小さくしたり無くしたりすることは法的にNGになりやすいので注意しましょう。
一方、窓を大きくしたり、増やしたりするのは問題ありません。

天井を高くする

天井を高くすることで開放感が生まれます。1階の天井裏は梁やキッチンダクトなどがあるので、天井を高くするのは構造的に難しいのですが、2階だと屋根まで天井裏がある場合が多いので、天井を高くしたいと考えている方はいるのではないでしょうか。
しかし、天井を高くすることも建築基準法が問題になります。建築基準法には、各部屋の体積と換気扇の排気量を計算する排気計算によって24時間換気して、1時間当たりの各部屋合計の半分の体積を換気するという条件をクリアしなければなりません。
部屋の体積は天井を高くすると大きくなります。そのため、天井を高くする場合、換気計算を行い大きな排気量の換気扇を設置しなければならない場合があります。
換気計算を知らずにリノベーションしてしまうと、建築基準法違反になるかもしれません。

階段の位置を変える

間取りの変更に伴い、階段の位置も変えたいと思うかもしれません。
建築基準法では階段の1段あたりの奥行や高さなどに決まりがあります。ただ戸建住宅の室内階段の場合、階段勾配の角度が56度までならOKとなるので、よほどの急角度でなければ条件はクリア可能です。
そのため、階段の位置の変更は建築基準法というより建物の構造が問題になってきます。
階段のあった2階は床に大きな穴がある状態です。つまり階段を移動することはこの穴も移動しなければなりません。
床には梁や大引といった木材が縦横にあります。構造上取ることが難しいため、階段を自由に移動することは難しいです。

屋根付き駐輪場

駐車場であれば問題ないと思うかもしれません。しかし、駐車場に屋根をつけると建物とみなされ建ぺい率に影響します。
建ぺい率は敷地の面接によって建てられる建物の大きさが決まっているため、場所によっては建ぺい率オーバーとなりNGとなってしまうケースもあり得ます。
地域によっては緩和策があり簡易なカーポートなら建ぺい率から除外というケースもありますので、住んでいる地域ではどのようになっているか確認しておくといいでしょう。
建ぺい率以外にも、防火に関する法律にも注意しなくてはなりません。
防火・準防火地域というエリアがあり、この地域では燃えやすい素材で建物を作ることは禁止です。
簡易カーポートの場合、ポリカーボネートと呼ばれる素材が使われますが、これは燃えやすい素材に該当します。建てる前に素材にも注意してください。

玄関ドアの交換

防火法の改正によって古くなったドアを交換することで問題になるケースがあります。
例えば都内23区だと30年前は防火準防火地域外のエリアが多かったのですが、現在はほとんどが地域内です。
30年前の玄関ドアは防火ドア出ない場合が多く、替えようとした場合防火性能のドアに変えなければなりません。これは窓も同じです。
業者によっては既存と同じ性能のドアを勧めてくる場合があるため、注意しましょう。

建築基準法を守らないとどうなる

建築基準法は私たちの命や健康、財産を守ることを目的にした最低基準であり、必ず守らなければなりません。
建築基準法を守らずにリフォーム・リノベーションをした場合、どのような自体が起こるのでしょうか。

災害で建物が倒壊・変形する恐れがある

構造耐力、防火性や耐火性、耐久性など基準を満たさなかった場合、地震や火災などの災害、腐食などの変性で建物が倒壊、変形する恐れがあります。

健康に悪影響を及ぼす恐れがある

建材に発散するアセトアルデヒドの量など、環境衛生上の確保や基準を満たせない場合、健康被害を受ける恐れがあります。

不動産売却時に評価額が低下する恐れがある

売却時に評価額が下がる、住宅ローンの対象外となり買い手がつかないなど、財産として不都合を受ける場合もあります。

使用禁止命令を受ける恐れがある

建築違反の建物に対して、措置が取られる可能性があります。使用禁止命令を受けたり、水道・ガス・電気が止められたり、最悪の場合、刑事告発や行政代執行を受けることも。

法律は改正されることを知っておく

法律は事件や災害など社会的な要請に応じて改正されてきました。技術の進歩により規制が緩和されたり、大規模災害のあと規制強化されたりと、改正目的は様々です。
タイミングによってはリフォーム・リノベーションしたあとに規制が強化されるケースがあります。法律は守らなければなりませんが、費用の問題もあり規制が強化されたからとすぐに直すことは難しいでしょう。
法律ではこのようなケースに対応するため、適用除外条項が設けられており、規制強化時点で既に建築された建物は改正前の基準を順守していればいいと定められています。
このような場合、既存不適格建築物と呼ばれますが、法律上は違法建築ではありません。
既存不適格建築物の場合、大規模なリフォーム・リノベーションを行う場合、確認申請が必要となり、改正後の法律が適用されるため、注意が必要です。

まとめ

リフォーム・リノベーションのために法律を理解することは難しいですが、必ず必要になってきます。
法律を知らなかったでは済まないこともあり、業者任せだと建築基準法を守らずに仕上げられてしまうケースもゼロではありません。
少なくても基本的な部分をしっかり理解しておき、悪徳業者にひっかかるということがないようにしましょう。